事業開始時期による節税

事業を開始する場合は会社を退職して起業する、いわゆる脱サラが多いと思います。脱サラして個人事業主として開業する場合は、いつ開始するのが税金としてトクなのか、解説したいと思います。なお、個人事業主(フリーランス)として活動する場合に限定しておりますので、脱サラして会社を設立する場合ではない点、ご留意ください。

所得税の計算方法(収入と費用・控除)

所得税を計算する場合は、まず収入の色分けをしなければなりません。会社からもらう給与なのか、自分の事業で得た売上なのか、土地を売った事による収入なのか、株を持っているから配当を受け取ったことによる収入なのかなどです。

収入を色分けできたら、その後それぞれの収入に係る費用(控除項目)を集計・検討していきます。例えば、事業による収入であればその事業に係る費用を集計、給与であれば給与所得控除というものを計算します。その費用や控除を各々の収入から引いたものが「所得」となります。事業に係るものであれば「事業所得」、給与であれば「給与所得」と呼ばれるものです。

損益通算による節税

上記で分類した所得の内、一部は「損益通算」をすることが可能です。「損益通算」とは、例えば脱サラした後に開始した事業が赤字であれば、その赤字(損)をサラリーマン時代の給与所得(益)と相殺(通算)し、給与所得を圧縮するということです。ここまで書くとこのコラムの本題がわかってきますね。つまり、脱サラして開業する場合は年の途中まで給与があり、一方事業は創業時に多額の経費がかかり赤字となることが多いため、その赤字と相殺することで節税効果が出る可能性があるということです。

累進課税

所得税はその年度の所得が大きければ大きいほど税率が高くなっていきますが、それを累進課税と呼びます。つまり、この脱サラによる創業時の経費を給与所得と相殺する事による節税効果は、給与水準が高く所得税率が高い方が創業時の経費を損益通算するとより効果が出ます。例えばその事業の成長がスローである場合は、年を跨いで開業してしまうと、高い税率である給与との相殺ができず、その年の低い税率の事業所得に対する効果しか出ないということもあります。

青色申告特別控除との関係

ここで注意が必要なのが、青色申告特別控除です。青色申告特別控除の内容は別の記事(青色申告と白色申告(個人))で解説していますが、最大で65万円の所得控除を受けられる青色申告をする個人事業者の特典です。この青色申告特別控除は、事業所得が赤字の場合は適用できないため、給与所得と損益通算するということは、青色申告特別控除がその年は受けられないということを意味しています。従って、65万円の特別控除が受けられないよりも、累進税率が高い所得と相殺する方が良いと判断できる場合に、この節税策は適用した方が良いことになります。

事業計画(シミュレーション)の重要性

本件は事業計画が立てられる場合に適用ができますし、また他の所得控除との関係など検討すべき項目は多いですので、税理士に相談の上、綿密なシミュレーションが必要になるかと思います。