医療費控除

今年は開業1年目であったため、税理士会が行なっている市役所や青色申告会、電話相談センターでの相談会に積極的に参加しました。その活動の中で、個人の確定申告で一番問い合わせが多かったのが医療費控除に関してです。医療費控除の手続きは近年かなり緩和され領収書の添付が不要となる一方、新しい様式に不慣れな方が多かった印象です。この新しい様式の記載の仕方に関して、以下記していこうと思います。なお、2019年4月現在の法令に基づいており、また、セルフメディケーション税制については本記事の対象外とします。

医療費控除とは

医療費控除とは、1年間にかかった社会保険診療や病気の療養のために支払った市販薬の購入代金が一定額(上限10万円)を超過する場合に、その超過した部分を課税所得から控除する仕組みです。つまり、年間で発生した医療費が高ければ高いほど税金が安くなるという制度です。

今までの医療費控除の申告方法

今までは全ての医療費に関する領収書を税務署に提出するか、申告の際に税務署に直接訪問して領収書を提示するかの対応が必要でした。領収書の量が多いと集計するのが大変で、また、送付するにも分厚くなり過ぎてしまい、結局税務署などに持参する方が多かったのではないでしょうか。

新しい医療費控除の申告方法

平成29年分から所得税の申告書に添付する医療費控除の明細書は下記に変更されました。

もっとも大きな変更は、「1医療費通知に関する事項」です。領収書の添付に代えて、健康保険組合などから発行される「医療費通知」を添付することによって、「医療費通知」に記載されている医療費は上記明細書に合計額のみを記載し、更に領収書の保存も不要になりました。

つまり、明細書に細かく詳細を記載するのに代えて、「医療費通知」をそのまま使っていいよということになりました。この「医療費通知」は組合などの団体ごとに書式が異なるため、「医療費通知」として確定申告書に添付するには以下が記載されていることが必要です。

  1. 被保険者等の氏名
  2. 療養を受けた年月
  3. 療養を受けた者
  4. 療養を受けた病院、薬局等の名称
  5. 被保険者等が支払った医療費の額
  6. 保険者等の名称

ほとんどの団体がこれに合致するように対応しているのではないかと思っています。これで、領収書をかき集めて、更に医療費を集計することが「軽減」されました。「軽減」と記載したのは、以下の点が注意点としてあるからです。

「医療費通知」を使用する上での注意点

  1. 健康保険証を提示して支払った医療費しか医療費通知には載っていない
  2. 全ての団体が医療費通知を発行しているわけではない
  3. 医療費通知の対象期間が1月〜12月というわけではない
  4. 医療費通知の発行が遅い

1に関しては、健康保険組合が集計できるの医療費の範囲と所得税法上の医療費の範囲に違いがあるため、しょうがないです。医療費通知に入らない代表例としては、治療のために購入した市販薬や医療機関までの交通費などで、これは別途集計する必要があります。

2に関しては、そもそも所属している健康保険組合などが発行していない場合もあります。

また、3と4に関しても団体ごとに異なります。国民健康保険、千葉県船橋市でいうと、1月〜3月分を8月末、4月〜6月分を11月末、7月〜9月分を2月末、10月〜12月分を5月末に発送しています。つまり、10月〜12月分は確定申告に間に合わなく、また7月〜9月分も2月末に発送と少し遅いです。従って、早く還付申告して所得税を還付してほしいという方は、1月〜3月分と4月〜6月分のみを添付して記載を省略、7月〜は別途明細に記載して申告するということになります。

領収書の保存に関して

もう一点、新しい明細書になって変更されたことは、明細書に領収書の情報を元に記載しておけば、今後は領収書の提出は不要で、5年間自宅で保存することでOKとなりました。これも手続きの簡素化という点では、大きな変化だと思います。

最後に

所得税の確定申告相談会で一番質問の多い医療費控除に関して記しました。手続きが簡素化されたことは納税者にとって良いことだと思いますので、簡素化されたことで積極的に医療費控除の適用、すなわち確定申告をしてみてはいかがでしょうか。

なお、電子申告をする場合は、以前から領収書の添付は不要で、5年間の保存でOKでした。電子申告において変更があったのは、医療費通知を団体等から電子署名付きでもらい、それを添付書類として電子申告をすることができるようになりました。1番の手続きの簡素化は、電子申告をする環境を整えることかもしれません。

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