税務調査②−税務調査の流れ


概要

前回は税務調査の大枠とドラマなどで見る税務調査(査察)との違いを紹介しました。今回は、税務調査の流れを記載していきます。①にも記載しておりますが、調査部所管法人の法人税・消費税調査及び源泉所得税調査を前提といたします。

税務調査の大きな流れ

平成25年1月に施行された改正国税通則法に基づき、原則は事前に税務調査を行うことが税務署などから連絡を受けることが明確化されました。これにより、以下が一般的な税務調査の流れになります。納税者側が行うべきことを中心に記します。

  1. 税務署や国税局から、税務調査を行うことの電話による事前通知
  2. 税務調査の日程調整(会議室の確保など)
  3. 実地調査前の事前の調査官との打ち合わせ・書面による依頼資料提示
  4. 実地調査開始までに揃えるべき資料の準備
  5. 実地調査の開始・事前準備資料の提出
  6. 実地調査中における追加資料の提出・代表者や従業員へのインタビュー
  7. 支店や工場などがあれば、支店や工場などへの実地調査
  8. 実地調査を終え、調査官側からの総括
  9. 誤りがあれば、修正申告若しくは更正などの手続

以下、各段階におけるポイントを紹介します。

事前通知

各確定申告に税理士の署名や税務代理権限証書と呼ばれるものを添付している場合は、一般的には税理士宛に税務署から連絡があります。ただし、納税者に直接連絡が行く場合もありますので、あまり手続きが定まっていないようです。その際は、対象となる税目(法人税や消費税、所得税など)、対象となる年度(直近から3年間など)、調査官側が希望する日程の提示、参加する調査官の人数、事前打ち合わせの日程調整などが行われます。事前打ち合わせは最近多くなっているようですが、それなりの規模の税務調査でないと行われません。

日程調整、会議室などの実地調査場所の確保

調査官が来る場合は、中小規模であれば1日〜1週間以内で実地調査は終わりますが、大規模になると3ヶ月〜半年くらい常駐することもあります。そうなると、調査官が常駐する場所を確保しなければならず、長期の日程を提示されてしまうと、場所を確保するだけでも一苦労です。どうしても場所が確保できない場合は、調査官に日程の再調整をお願いすることもありかと思います。

ただし、話は少しそれますが、税務職員の人事異動は毎年7月になります。3ヶ月の調査期間の規模の税務調査を例にすると、7月〜10月、10月〜12月、1月〜3月、4月〜7月のような形でそれぞれの法人の調査日程を組むことがあり、そこから逸脱してしまうと、調査官も困ってしまう部分があります。突然の税務調査なのでこちらとしても納得できない部分がありますが、調査官も他の案件で忙しいということも考慮に入れて調整していくことが必要です。調査官との信頼関係は調査においても大事ですので。

事前打ち合わせ及び書面による依頼資料リストの提示・事前準備

実地調査の前に事前打ち合わせの機会を設けることが多くなっているようです。事前打ち合わせの際には納税者側から簡単な事業概要を説明し、会社案内などのパンフレットや組織図などを提出、調査官側からは実地調査までに用意してもらいたい資料のリストが提示されます。実地調査までに用意する資料は、大体以下のようなものです。9からは源泉所得税での特有のものです。

  1. 法人税・消費税確定申告書控え、決算書、勘定科目内訳書
  2. 総勘定元帳、現金出納帳などの各種帳簿
  3. 支払・入金に関連する証拠書類(請求書、領収書など)
  4. 契約書や見積書、検収書などの証拠書類
  5. 意思決定がわかる稟議書
  6. 取締役会や株主総会の資料及び議事録
  7. 出資関係図や関係会社(特に子会社)の情報
  8. 業務・経理システムの概念図
  9. 給与台帳
  10. 源泉徴収簿などの法定調書
  11. 源泉所得税の納付書控え
  12. 従業員の人事情報

上記はあくまでも最低限の準備資料ですので、実地調査中はこれに加えて無数の資料の提示が求められます。

長くなりましたので、次回③では実地調査開始後から調査終了までのポイントを記します。