青色申告と白色申告(法人)
確定申告といえばよく聞き慣れた言葉として「青色申告」という言葉があります。青色申告は確定申告をする上で適用できる申告の種類のことで、事前に青色申告として申告しますという届出を行えば種々の特典を得ることができます。
一方で、アメとムチの関係のように、青色申告するために求められる要件があります。しかしながら、その要件は法人を運営していく上で必要不可欠なものであるため、青色申告をすることについてのデメリットはないと考えて良いと思います。
反対に、青色申告とは別に「白色申告」というものもございますが、白色申告は特にメリットがないと断言できると思います。以下、青色申告の概要、適用するために要求される要件及び届出、青色申告の代表的な特典に関して記します。
青色申告の概要
青色申告はすでに記載した通り確定申告の種類のことであり、他の種類としては白色申告があります。なぜ青色申告というかというと、本当に確定申告書の表紙が青いからです。事実、現在も青色申告を適用している法人に税務署から郵送されてくる法人税申告書の表紙(別表一)は青いです。ただし、所得税の申告書は既に青色申告であっても青色の用紙ではなくなっており、また、電子申告が普及してきていることもあり、「青色」という言葉の意味はなくなってきました。
つまり、「青色申告」とは「税務上の特典を受けるために帳簿の要件を備えている方式で申告する確定申告の種類」とイメージ頂ければと思います。一方、白色申告は簡易帳簿でよしとされている一方、青色申告で受けられる種々の特典は受けられません。
適用要件
適用要件としては「一定の帳簿」を準備し、「複式簿記により必要とされる項目を帳簿につける」ことです。そして、その帳簿書類を一定期間保存しなければなりません。
なんだか複雑なような気がしますが、法人を運営していくにあたり、会計ソフトを導入するのは今や一般的かと思いますが、会計ソフトを導入して日々の取引を記録していけば、基本的には要件を満たせると思って頂いて構いません。
簿記3球の知識があれば仕訳は切れると思いますし、現在の会計ソフトは簿記の知識がなくても記帳できるソフトも存在します。したがって、「複式簿記により必要な項目を帳簿につける」ことができます。
そして、今の会計ソフトは取引を記録したら様々な書類(帳簿)により取引内容を出力することが可能ですので、「一定の帳簿書類」を準備することが可能です。この「一定の帳簿書類」は、事業運営する上で不可欠な財務数値を表してくれる分析書類になります。したがって、法人を「健全に」運営していく上で必要不可欠な書類を準備するだけで、青色申告の要件を満たせるということになります。なお、税理士に記帳した項目をチェックしてもらえば、より確実です。
適用要件の一つでもある届出
会計ソフトを導入して取引を記録していけば青色申告の要件を満たせることがわかりましたが、一つ注意しなければならないのが届出です。青色申告の適用要件には届出を期限内に提出しなければならない要件もあり、その届出の提出を忘れてしまうことで青色申告を適用できないということもあります。特に、新設法人に関しては、設立後3月を経過した日と設立事業年度終了日のいずれか早い日の前日までに提出しなければならないため、特に注意が必要です。
青色申告の特典
最後に、青色申告を適用することで受けられる特典のうち、中小企業が受ける頻度の高いものを列挙いたします。
- 中小企業者等の少額減価償却資産の特例(別の記事参照)
- 欠損金の繰越控除/繰戻還付
- 種々の特別償却/税額控除
欠損金の繰越控除/繰戻還付
青色申告法人がある事業年度で税務上の赤字(欠損)を計上した場合は、その赤字(欠損)を次の事業年度以降の黒字(所得)と相殺することができます。これを欠損金の繰越控除と言います。
一方、黒字となった事業年度の次の年度(厳密には1年以内に開始する事業年度)に赤字が計上された場合は、赤字の金額をベースに、黒字であった事業年度分として支払った法人税の一部もしくは全部を還付してもらうことができます。還付となると税務調査(机上調査で済む場合もあり)は必須かと思いますが、何れにせよこの制度も青色申告でなければ適用できません。
特別償却/税額控除
一定の固定資産を購入した場合に税務上の恩典を受けられる特別償却や税額控除も青色申告法人でなければ適用できません。最近特に適用が多いのは所得拡大促進税制で、単純に言えば前年以上に従業員に給与を支払った場合は、その増加分をベースとして税金を一部減額しますよという制度です。こちらも、青色申告法人でなければ適用できません。
以上のように、法人を運営する上で必要な書類がそのまま要件となっている青色申告制度は適用することでメリットは多く存在し、デメリットはないと言っても過言ではありません。自社が青色申告を適用していない場合は、早急に青色申告の届出を行うことを推奨いたします。
なお、本記事は全て法人を前提としておりますので、個人の取り扱いは別記事をご参照ください。