租税条約①−概要
国際的な取引に関し、どの国でどのような課税が起こるのか、わからないことがよくあります。例えば、日本法人がインドに進出することを検討することとなり、インドの弁護士法人に支店の設立やインドの子会社の設立に関する手続きのアドバイスを受け、報酬を支払うとします。その際には、インドの弁護士がたとえ来日していなかったとしても、日本で源泉徴収をした上でインド法人に報酬を支払う必要があります。つまり、インド法人が日本で課税を受けていることになります。これは何が根拠となっているのか。数回に渡り租税条約に関して記していきたいと思います。
租税条約とは
租税条約とは簡潔にいうと、日本が他国との間で結ぶ税金の取り扱いに関する取り決めのことです。冒頭で記した通り、国際取引はどの国でどのような課税が起こるのかというのを検討しなくてはなりません。例示で考えると、法律のアドバイス料に対してインドでも日本でも課税されてしまうようなことが起きると、税負担が重くのしかかり企業活動に支障をきたすことがあります。これを二重課税と言います。この二重課税を排除することが、租税条約の主な役割とイメージしてください。事実、日本とアメリカの租税条約の正式名称は、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」です。長いですね。
租税条約とその他の日本の税法との関係
租税条約は他国との税金の取り扱いに関する取り決めですが、そもそも日本は国家である以上課税権を有しており、その課税権を行使することを律しているのが法人税法や所得税法などの各種税法であり、それは他国も同じです。租税条約に対して各国内で定めている税法のことを「国内法」と呼ぶことが多いですが、租税条約は国内法の上位概念であり、国内法よりも租税条約が優先されます。つまり、「この取引は国内法ではAという取り扱いだけど、インドとの国際取引だから、インドとの租税条約で考えるとBという取り扱いになる」ということです。
課税権の配分
二重課税の排除というのが租税条約の主な役割と記載しましたが、上記国内法との関係でもわかるように、租税条約は国内法に優先されるため、国と国との課税権行使の調整をする役割もあります。「Cという状況では日本でも課税していいから、Dという状況だったらインドでも課税させてね」のようなものを国同士で約束しているということです。
以上、簡単ですが租税条約とは何か、役割や国内法との関係において説明しました。次回は、例示であげていたインドとの租税条約における取り扱いに関して記していきたいと思います。